シューベルト
①ピアノ・ソナタ第20番イ長調 D.959
②4つの即興曲 D.935、Op.142
第1番ヘ短調
第2番変イ長調
第3番変ロ長調
第4番ヘ短調
ルドルフ・ゼルキン(P)
録音:1966年、1979年
ゼルキン晩年の至芸。武骨なピアニズムから溢れ出る作曲家の真情にただ涙するのみ。ルドルフ・ゼルキンがステレオで残したシューベルト。ごつごつした武骨なタッチから生み出される流麗さとは無縁のゼルキンならではの解釈は唯一無二の真摯さを湛え、表現の幅が広いスケールの大きな音楽で聴く者の心に直接訴えかけてきます。第20番は他の演奏に比べてもかなり遅いテンポ。音色のせいもあり無骨なピアノで、自分は不器用なのでこういう弾き方しかできませんから、と言われているよう。でもその遅いテンポから滲み出てくるシューベルトの美しさは、時に瞑想的で、息をのんでじっと聴き続けてしまいます。即興曲4曲も滋味深い名演。
ソナタD959は、第1楽章の非常に大きな構想の中に垣間見える虚無感と、続く第2楽章の孤独感からやがて噴出する激情の表情からして、すでにただならぬ世界が展開されています。さらに第3楽章では美しい軽みの隙間に、放心の忘我の瞬間が訪れます。そして第4楽章はシューベルト固有の歌が常に充溢しながら、明らかに別れを告げる音楽になっていて、万感を込めた回想とともに締めくくられる美しい哀しさです。この楽章の奇蹟的な諦念のまぶしさは、唯一モーツァルトの最後のピアノ協奏曲の最終楽章のみが匹敵するものです。
このソナタに流れる稀有の時間を、総ての楽想の明暗と悲喜の意味を、そのまま生かしながら深い集中において自らもまたそこに生き切ることができる。さらにD935の諸曲において、湧き出し続ける無心と有心の歌の狭間から、ゼルキンはシューベルト特有のやるせない情感を存分に息づかせています。本物の芸術作品に触れるときに抱く「持続」の感覚。どこにも人工的作為の跡を留めないひとつの生命体に接している感覚。ルドルフ・ゼルキンは、これらを成就してくれる数少ないピアニストのうちの一人です。
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