ご覧いただきありがとうございます。8cr13movのフルタングナイフです。炭素0.8%、クロム13%、モリブデン(mo)とバナジウム(ⅴ)配合で、日本鋼ではAUS-8(8A)に近く、440C鋼よりもmov配合のため切れ味の持続性が高いと評価されています。貝印(カーショウ)、ガーバーやスパイダルコなども、この鋼材を積極的に中級モデルに採用しており、HRC硬度で58-60を叩き出す刃先がもたらす切れ味と刃持ちには、長い歴史で一定の評価を得られているようです。今回お届けするのはハンドルもシースも耐衝撃性ABS樹脂とナイロンの、海水や汚れに強い丸洗い可能なモデルです。野外で長期間手入れが十分にできない環境で過ごす場合や、水場や海で魚などを処理して、頻繁に丸洗いをしたい用途など、十分なcr含有で錆びにくく、炭素0.8%の鋭い切れ味とmovの効果で耐摩耗性、いわゆる刃持ちが良いというのは頼もしい相棒に成り得るでしょう。逆に硬度と耐摩耗性がここまで上がると、頑張って家庭用砥石で砥ぎ直すよりも、ちょっと上質な砥石も検討したほうが、良いとも思われます。シャプトンの1000番で十分です。お渡しする物自体、腕の産毛が簡単に剃れる切れ味にしておりますが、いつもスウェーデン製刃付専用機TORMEK T-8で整えるエッジ、実は中砥石と革砥(青棒)までしか使っておらず、鏡面仕上げで不安定なエッジ角度をごまかすような中級者の砥ぎは、一切行っておりません。本品は片側20度ずつ合計40度の角度で、根元から切先までぴっちりエッジを整えてからのお渡しです。この角度を維持するように砥石でなぞれば、良い砥石なら砥ぎ直しも簡単です。本品はある既製品に既視感を強く抱くデザインですが、その既存品は鋼材が炭素0.4%の420HCです。サバイバル環境での想定上、靭性優先の結果でしょうが、単純な刃の硬度は本品の方が上回るという、妙な現象になっています。ただし、8cr13movは優秀な刃物鋼材ですが、硬すぎて折れやすいとされる報告も挙がっています。破壊系強度テスターJoe X氏もテスト中に折ってしまわれました。切れ味と刃持ちが欲しい、汚れや調味料ベタベタになっても気にせず丸洗いしたい。自分は、木に刺してえぐる、壁登りの足場に使う、石やブロック相手に叩き付けるなんて事はしないよ、という方なら長い付き合いができると思います。